2018年3月13日火曜日

実はウグイは凄い奴!?

標津サーモン科学館内に「川の広場」という生体展示を中心とした区画があり,そこにはイトウ,ニジマスなどのサケ科魚類の水槽や,お馴染みのチョウザメ「指パク」体験コーナー,そしてウグイ(コイ科ウグイ属)の水槽もあります。



釣り人などには嫌われがちなウグイですが,食欲が旺盛なため,ご購入いただいた餌を与えるお客様には意外に人気があります。


ウグイが餌に飛びつき,波立つ水槽

コイ科魚類は純淡水魚の一大グループとして知られていますが,ウグイと同属のマルタウグイ*には他のコイ科魚類にはない特性があります。それは海で暮らすこともできる(繁殖は淡水域で行われますが)という性質=降海性です。


道内沿岸で釣れたマルタウグイ(と思われる)。ウグイ属魚類は種間交雑が頻発するため,婚姻色が出る繁殖期を除けば,外観からの種判別は難しい。

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ウグイ属魚類は日本海周辺域の極東域のみに分布していますが,日本海は過去の氷期には海水準の低下により,日本海と他の海域間の海峡が陸化もしくはごく浅くなったため,他の海域からの海水流入がほとんど無くなり,氷期の日本海は低塩分化していたと考えられています。


ウグイ属魚類の分布(灰色の部分).A,ウグイ.B,エゾウグイ.C, ウケクチウグイ.D,マルタウグイ.出典:天野・酒井 (2014).

純淡水魚であったウグイ属魚類の祖先の一部は氷期の日本海に入り込み,そのような低塩分環境で暮らすうちに,降海性を有するウグイとマルタウグイに進化した,という興味深い説があります。

彼らの降海性にまつわる自然のドラマを想像すると,ウグイに対する見方が少し変わるかもしれませんね。



単純にエサをやるだけでも,楽しいですよ。

*天野・酒井(2014)論文によれば,マルタウグイは形態学的にマルタ型とジュウサンウグイ型に分かれ,日本海沿岸域や北海道などに生息するマルタウグイはジュウサンウグイ型になります。今後,これらの二型は,別亜種もしくは別種として扱われる可能性があります。

 (地域おこし協力隊サーモン科学館支援員T. T.)

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