2020年11月22日日曜日

産んだ卵は・・・

 ある日の夕刻・・・、

館内「魚道水槽」では、作業するスタッフの姿が展示されていました(笑)

「砂場で遊んでいる子供」のようにしか見えないかと思いますが、「卵の回収」というれっきとした重要作業なのです!

↓↓↓

11月の「魚道水槽」では、「シロザケの産卵行動」を展示しています。

水槽内にサケが産卵できる環境を整え、目の前で産卵する様子をご覧いただくわけですが、

【シロザケの産卵】

「産み終わった卵はどうするんですか?」

よくいただく質問です。


1尾のメスザケは、お腹の卵を3~5回に分けて産卵します。

お腹の卵を産み切ったと判断したメスは入れ替えますが、そのままだと新たなメスが「前のメスが産卵した卵」を掘り返してしまうことになります。

水槽内の底面に敷き詰めた砂利の下には、パイプを配管しており、砂利の下から水が湧きだす「湧水スポット」を仕掛けてあります。

メスはこの湧水を探り当て、その周辺に産卵することが多いのです。

「湧水スポット」は「右・左」と2か所に埋設してあり、どちらか片方から水を湧かせることで、少なくともメス2尾分の産卵床が重ならないようにしています。

そして、ある程度全面に産卵したところで、サケと水を抜いて、「卵の回収」の作業となります。

メスは、産卵した箇所に周辺の砂利をかけ、小山のように仕上げます。

私たちは、サケがしていたのと逆の手順で卵を探り当てていくわけで、

【小山になっている砂利をよけて、産卵ポイントの中心となる小石を見つけると、その小石の下に卵がまとまっている】

という理屈ではあるんですが!

 が!!

そのようにきれいに産んでくれていないことも多々あり、

掘っても掘っても卵が出てこなかったり、

一帯の砂利の中にバラバラと散在していたり、

と苦労させられます。

見つけた卵は、手で扇いで水流に乗せて網の中へ入れていきます。

この作業を体験すると、一連の「産卵行動」の一つ一つが理解できますし、メスザケの苦労が分かる気がします。

サケたちにとって卵は、己の一生をかけた終着点であり、次世代の息吹でもあります。

卵が他の動物たちに食べられてしまわないよう、春に稚魚になって泳ぎ出すまで健やかに育てるよう、しっかりと「産卵床」を作っているのです。誰に教えられるわけでもなく。

回収した卵は、来春の旅立ちの時まで、バックヤードで飼育していきます。

(T.N.)

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