2018年10月1日月曜日

知床河川の極小ヤマメ成熟雄

9月上旬,お誘いを受け,サクラマス(ヤマメ)を主対象とした知床河川調査に同行しました。なお,この調査の代表者は某有名サケ科魚類研究者で,道知事より特別採捕許可を受けて実施されました。



調査は電気ショッカー(エレクトロフィッシャー)という電気漁具を用いて行われ,尾叉長(吻端から尾ビレの最湾入点までの長さ)で6㎝から20㎝ほどの多数のヤマメ(未分化幼魚と河川残留型)に加え,


採捕され,麻酔を施されたヤマメ

尾叉長40㎝弱から50㎝弱の降海型親魚もかなり獲れました◎


降海型雄


降海型雌

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この調査河川,規模は小さいですが,サクラマス・ヤマメの獲れ具合から,本種の再生産が上手くいっているように思われました。7年ほど前に下流域の堰堤に付設された魚道が機能しているようですね。



さて,獲れたサクラマス・ヤマメは麻酔を施され,体サイズ(尾叉長)を測定した後,成熟状態(成熟か未成熟か)をチェックし,成熟魚は雌雄判別され,生活史型(降海型か河川残留型か)も記録していきます。これらの測定作業の後,捕獲魚は放流します。



中流域での測定作業中,とても小さな河川残留型雄(ヤマメ成熟雄)が獲れていることに気づきました。尾叉長は7㎝ジャスト。調査代表者によれば,この川では尾叉長6㎝台後半の河川残留型雄もたまに見られるとのこと。通例,サクラマス(ヤマメ)は,尾叉長7㎝程度では性成熟しないため,この川の最小成熟サイズはかなり小さいように思われます。


尾叉長7㎝の河川残留型雄(ヤマメ成熟雄)

一般に,河川残留型雄は降海型雌雄のペアの間に忍び込んで卵に放精し,受精しようとする「スニーキング」(sneaking)という繁殖行動を採りますが,河川残留型雄にはスニーキングのためのポジションをめぐる争いがあり,既往研究によれば,その争いでは体が小さいほど不利になると考えられています。


大小の河川残留型雄(ヤマメ成熟雄)

しかし,この調査河川では,尾叉長7㎝前後の小さな成熟雄でも受精卵を得られる理由がありそうだな・・・などと思いながら,所用のため,調査途中で脱渓したのでした。

話は変わって宣伝ですが,当館にて「北海道のサクラマス(ヤマメ)の一生」も販売中(1枚200円税込)。北海道のサクラマス(ヤマメ)の生活史がA4サイズ1枚に簡潔にまとめられていますよ~



 (地域おこし協力隊サーモン科学館支援員:T. T.)
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ヨロシクネッ♪

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