現在、開催中の
特別展「カラフトマスの不思議」では
カラフトマスの最大の特徴である「せっぱり」(産卵期にオスの背中が盛り上がること)
に焦点を当て、そのしられざる秘密について、紹介しているのですが・・・
実は 私の中でひそかに気になっていたことがあります。
数年前、道東のある小さな川でみつけた
せっぱらないカラフトマス集団の存在である。
2008年8月上旬、ある用事で知り合いの方と2人で、問題の小川にでかけ、
川岸に近づくと、バシャバシャ水しぶきがあがり、魚が群れている様子が見て取れました。
水面の波立ち具合から推測すると、魚体の大きさはそれほど大きくなさそうだが、群れは大きそう。 そのときは魚体の大きさ、群れの大きさから、直感的にウグイの群れだと思ったのですが・・・
採捕許可を取っていたので近づいてみて、捕まえてみると・・・
アブラビレがあるのでサケ科であることは見て取れ・・・
魚体の形や大きさから、一瞬サクラマスかと思いましたが、
いや・・・でも何かが違う。 尾びれにある大きな黒い点々はまさに、
カラフトマスの特徴そのもの。
しかし、小川を埋め尽くすほど遡上しているその魚
の大きさは30センチ前後と明らかに平均的なカラフトよりも小さく・・・。
全体的に赤みがかった体色は他の川のカラフトにはみられない特徴なのだ。
何よりカラフトマスの最大の特徴であるはずの、
せっぱりや鼻曲りがほとんどみられないではないか!?
そして、その年の10月にそのままの姿のまま、かのマスたちは産卵を迎えたのだった。
独特の婚姻色に早すぎる遡上時期やせっぱらない小型の体など。周辺の川に遡上するカラフトマスとはずいぶんちがう。カラフトマスはほかのサケ科に比べて、母川回帰性が低いといわれるが、
河口から30kmほど離れたこの小川(川幅3mほど)に回帰し、ここだけで世代交代を
繰り返しいる独立した繁殖集団なのではないか!?とひそかに思っている。
メスをめぐる産卵場でのオスどうしの喧嘩のときに背中がでているとライバルのオスにかまれにくくなり、喧嘩に強くなるという。そんなメリットがある一方で、でっぱった背中は浅瀬で座礁しやすく、
クマなどにも捕食されやすいという。
確かに、この小川の浅瀬で世代交代を繰り返す集団であれば、座礁しやすくなったり、ヒグマにも食べられやすいせっぱりはメリットよりデメリットの方が大きく、せっぱる必要はなくなり、
体が小型化したという説明はつく。
本日、数年ぶりに確認し、普段活魚作業や科学館内で見慣れているカラフトとは
ちがう独特の容姿に・・・あらためて謎は深まるばかり。
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せっぱらないカラフトマス(これでもオス) |
youtubeにアップした動画↓
ウグイと見間違うほどの小さなマスの群れ
(K.N)